カワイイ子猫のつくり方
「おいっ大丈夫かっ?」

朝霧がすぐに実琴の傍へと駆け寄り、その小さな身体を両手に拾い上げてくれる。

『あさ、ぎり…。ありがと…』

実琴としては普通に口にしたつもりだったのだが、思いのほか弱々しい声が出てしまい、僅かに朝霧の表情が険しいものへと変わる。

「辻原…」


その間にもベッド上の子猫は、頭を抱えてうずくまったままガクガクと震えていた。

「ちょっと…。あまり騒ぎになると、すぐに看護師が駆けつけて来るわよっ。どうにかして落ち着かせないと」

二人と一匹の視線がベッド上へと注がれる。

そんな中、不意に天井を振り仰ぎ声を上げる素振りを見せた子猫に、慌てて守護霊さんが抑え付けに掛かると、そのまま強引に口許を片手で押さえ込んで、それを封じた。

「~~~~~っ!」

その咄嗟の行動のお陰で、声が外に漏れることはなかったが、子猫の恐怖心は最高潮へと達してしまったようだった。


暴れる子猫。

そして、それを必死に押さえ込む守護霊さん。


だが、それは端からすると、実は全然違うものに見えていたりする訳で。

中身はどうであれ、『少女を羽交い締めにして押さえ込んでいる中年おじさんと、必死に抗う少女』にしか見えないのである。(朝霧のお父さん、ごめんなさい!)

そんな…下手をすれば犯罪めいたアブナイ図にしか見えない目の前の状況に。

「………」

実琴も朝霧も、ほんの一瞬ながらも複雑な感情が頭をよぎってしまうのだった。
< 187 / 220 >

この作品をシェア

pagetop