カワイイ子猫のつくり方
照れ隠しに視線を逸らしている、その朝霧の様子が何だか新鮮で。

実琴は思わず、くすっ…と小さく笑いを零すと。

「綺麗で可愛い名前だね」

そう素直な感想を伝えた。

以前、自分が子猫だった頃、朝霧は猫に名前を付けようと千代が提案するのを面倒くさそうに「名前などなくても別に困らない」なんて言っていた。

(そんな朝霧自らが名前を付けてあげるなんて…)

何だか嬉しいではないか。


「可愛い名前を付けて貰って良かったね、ルナちゃん」

そう言って膝の上に乗せていた子猫に視線を落とすと、子猫は何だか虚ろな瞳をしていた。

(あれっ…?)

その小さなふわふわの身体を両手のひらに乗せ、目線の高さまで持ち上げてみると、既に朦朧としているような感じだった。

「朝霧、ルナちゃん…何だか眠そうかも」

それでも、こちらに視線を合わせようとしてくれているのが可愛くてたまらない。

「そうか…」

朝霧は小さく頷くと「寝床に寝かせるか?」と、ベッドの横に置いてある籠を取りに行く。

「そうだね。その方がゆっくり休めるかも」

子猫を抱えながら実琴も頷くと、とうとう瞼を下ろし掛けているその小さな子猫の額に「おやすみ」と、軽くキスを落とした。

…と。

その時だった。


「えっ?」


一瞬、実琴と子猫の周囲がフラッシュを浴びたような光に包まれる。

「……っ…」

眩しさに目を瞑る実琴の耳に、朝霧の自分を呼ぶ声が遠く聞こえていた。

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