カワイイ子猫のつくり方
(朝霧って、こんなこともするんだ?昔猫を飼ってた時にも付けてあげたりしたのかな?)

千代さんが「昔はよく捨て猫や捨て犬を拾ってきた」って話していたし。


もう自由にしていて良い…と言うように床へと下ろされた実琴は、チリチリと小さな音を鳴らしながら、ちょっぴりご機嫌で室内を見て回っていた。


普段は人に冷たい毒舌男でも、動物などを愛でる気持ちが少しでもあるのなら、それはそれでまだ好感が持てるというものだ。

(こうして私のことも連れてきてくれたんだもんね。意外に優しい所もあるのかも…)

もしもあのまま、あの場に一人残されていたら今頃どうなっていたか。

雨に濡れて冷えたこの小さな身体は、危険な状態に陥っていたかも知れないし、朝霧の言う通り、カラスや野犬に襲われていた可能性だってあるのだ。

そう思うと、朝霧への印象も僅かながら変わっていく気がした。

(今日のことに関しては、素直に感謝の気持ちしかないよね…)

それでも、もしこの気持ちを今アイツに言葉で伝えられたとしても、いつものように冷たい言葉で一蹴りされてしまうのだろうけれど。


そんなことを考えながらなんとなく朝霧を振り返ると、朝霧の視線もこちらに向けられていて。

まるでこちらの気持ちを見透かすような、真っ直ぐな視線にドキリ…として。

思わず、その瞳から目が離せずにいた。
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