カワイイ子猫のつくり方
すると、視線はそのままに。

朝霧が納得したように、ぽつりと呟いた。


「これでいちいち何処にいるのか探す手間が省けるな」


実琴は衝撃でピキッ…と、その場に固まった。

(はあっ!?もしかして、この鈴はその為だけっ!?)


首元の小さな鈴がチリリ…と鳴った。





その晩。夜も更ける頃。

僅かな街灯の明かりが窓際を照らしているだけの薄暗い部屋の中、実琴は目を覚ますと、そっと顔を上げた。

室内はとても静かで、微かに聞こえる規則正しい呼吸音から朝霧が眠っていることを知る。

千代が用意してくれた小さな籠にタオルを敷き詰めてある寝床からゆっくりと起き出すと、そっと窓辺へと向かう。

その際、首元の鈴がチリチリと鳴り、慌てて朝霧が眠る方を振り返ったが、目を覚ます気配はないようなのでホッ…と胸をなで下ろした。

そうして出窓の窓台の上へと何とか登ると、そこから見える外の景色を見つめた。

放課後からずっと降り続いていた雨は、もう既に止んでいるようだった。

実琴はその場に腰を下ろすと、そのまま何とはなしにぼーっと外を眺める。


(…今日は色々なことがあって疲れたなぁ…)


目が覚めたら自分の身体に戻っていて『無事解決!』っていうのを期待していたのに。

そんなに現実は甘くなくて。


(これから、ホントにどうしたらいいんだろ…)
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