カワイイ子猫のつくり方
(なるほどー。ここがどの辺なのか、なんとなく分かったぞー)


掲示されている路線図を見て実琴は顔をほころばせた。

子猫の姿である今は、それが表面上には表れてはいなかったが。

その横には次のバスを待つ列が既に出来始めており、サラリーマン風の男性や学生たちが路線図を見上げるようにじっと座っている子猫の様子を物珍しそうに見ていたが、そんな皆の視線に気付くことなく実琴は前を向いて歩きだした。


今のバス停からだと学校最寄りのバス停までは五つ程。

それならば、やはり学校の方へ一度戻った方が得策だ。

こんな小さな子猫の足では、いったいどれ程の時間が掛かるかは分からないけれど。

(それこそ、考えててもしょうがない。行動あるのみ!だよね)

実琴は駆け出した。

子猫の身は軽く、走るのもあまり苦は感じない。

ただ、自転車などが来ると危ないので、歩道の内側の端をひたすらに駆けて行く。

(まずは、次のバス停を目指そう。順にそうして行けば、きっと迷わずに辿り着けるよね)

この時間ならバスの本数も多い。運行経路に迷ったら走っているバスを探せば良いのだ。



駆けて行く実琴の頭上には、澄み渡るような青空が広がっていて、昨日の雨が噓のようだった。

九月に入ったものの、未だ真夏のような強い日差しが正面から照り付けていて眩しい程だ。

(良い天気…。今日も暑くなりそうだな…)
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