カワイイ子猫のつくり方
そんなやり取りを教室内で見ていた者たちも(あのバカ!)と男の軽はずみな失言に固まっていた。

気まずいその空気に見兼ねた一人が、苦笑を浮かべながら横から口を出してくる。

「ばーか。朝霧は第一発見者なんだぜ?あと主事のオッサンもな」

「そ…そーだったんだっ?」

その生徒の言葉を助けとばかりに「いやーごめんなー…朝霧。ヘンなこと言って」と男は謝罪しながら、そそくさとその場から立ち去って行った。

そうして僅かに緊張していた教室内の空気が解かれていくのだった。


(…馬鹿馬鹿しい)

朝霧は小さく溜息をついた。


何に怯えてるんだか。

そんなに慌てる位なら軽はずみに口なんか出して来なければ良いものを。


こんなことは、ザラだ。

大半の同級生は、皆自分にどこか怯えた素振りを見せる。

それでも、面倒ごとに巻き込まれるよりはマシだと思っていた。

ただ、いつもなら。

こういう雰囲気になった時でも平然と声を掛けてくる変わり者が若干一名いたのだが。


朝霧は空いている実琴の席を何気なく見つめた。

(辻原にあの猫のことを聞けなくなったな…)


そのまま窓の外へと視線を移すと、そこには綺麗に晴れた青い空が広がっていた。



(…アイツ、外に行っただろうか…)




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