カワイイ子猫のつくり方
「ワンッ!ワンワンッ!!」


犬が吠える。

その大きさと迫力に、実琴は後ずさりした。


普通に見てみれば然程大きくはない、中型犬の雑種。

でも、今の自分から見たらモンスター級の大きさと言ってもいい。

飼い犬なのだろう。首にはちゃんと首輪が付いている。

…なのに。


(何でちゃんと繋いでおかないかなーっ。飼い主さんを恨むよーっ!)


ずっと順調にバス通りを歩いて来て、学校の最寄りのバス停まであと一つという所で思わぬ事態が起きた。

向かう先の道端に犬がいたのだ。それも放し飼いなのか逃げてきたのかは分からないが、紐に繋がれていない。

嫌な予感がしつつも、そっと近付いて行くと不意にその犬と目が合った。


それが合図だった。


途端にこちらに向かって駆けてくるその犬から慌てて逃げるように横道へと入ったのだが、何よりそれが失敗で。

その道は数十メートル先で行き止まりだったのである。


にじり寄って来る犬から目を逸らさず必死に威嚇するものの、こんな小さな子猫の姿では効き目はないようだった。

後ろは高い塀に囲まれている。

(どうする!?一か八かで塀を駆け上がるしかないかっ)

でも、この小さな身体では到底無理のような気がした。

その時。


『こっちだよ!』


何処からか声がした。

周囲を見てみれば、犬がいるすぐ真横辺りに塀の壊れた小さな穴があり、そこから一匹の猫が顔を出していた。
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