カワイイ子猫のつくり方
「みゃっ!!」
「……っ…」
しっかりと。
だが、クッションを付けるように優しく受け止められる。
覚悟していた痛みや衝撃は殆どなかった。
実琴は咄嗟に瞑っていた瞳をおそるおそる開くと。
自分を抱えたまま、こちらを見下ろしている朝霧と目が合った。
眼鏡のレンズ越しに見える朝霧の瞳は、いつもの冷たさは感じられず、どこかホッとしているようなそんな表情だった。
『あさぎり…』
安心したからだろうか、思わず泣きそうになって朝霧の名を呼ぶと。
「何をやってるんだ、お前は…」
朝霧は少し呆れたように一つ息を吐くと、
「もう少しで喰われるとこだ。…ったく、世話の焼ける…」
そう言いながらも、優しく頭を撫でてくれた。
それはある意味動物好きであるらしい(?)朝霧の、猫を抱いた時の条件反射的な行動によるものなのだろう、とは思う。
でも、思いのほか優しい…その大きな温かな手は、まるで「もう、大丈夫だ」と自分に言ってくれているようで。
実琴の胸には極度の安心感と、少しの切なさを生んだ。
(それにしても…)
朝霧は腕の中の子猫を見下ろしながら考えていた。
子猫はつぶらな瞳を向けて、じっと見上げて来る。
流石に怖かったんだろうか。大人しく抱かれたままだ。
だが、そもそも…。
(何でコイツはまた、こんな所にいるんだ?)