カワイイ子猫のつくり方
家を出る時には部屋にいたコイツが今此処にいるということは。

どんな手段を使ったかは別としても、家からここまでわざわざやって来たということになる。

そして普通に考えるならば、手段としては歩いて来た…と考えるのが自然なのだが。


自らの足で。

家からこの学校までの道のりを?

この、まだ見るからに幼いふわふわの子猫が…?



そこには違和感しか感じない。



それに、そもそも何故この場所なのだろうか?

家からの距離は決して短いとは言い難い。

道のりも決して単純な道筋などではなく、偶然この場所へ辿り着いたというには、あまりにも出来すぎではないのか。


(変わった猫だとは思っていたが…。これは、あまりにも…)


朝霧は不思議なものを見るように手の中の子猫を見下ろした。

視線を感じたのか、子猫もどこか物言いたげな瞳で見上げて来る。

その時、子猫の首元の鈴が控えめにチリリと鳴った。


その音に朝霧はふと、我に返る。


今は体育の授業中だった。

いい加減戻らなければ、そろそろ教師が戻ってくる頃だろう。


「…仕方ない」


朝霧は小さく呟くと。

「少しだけ我慢していろ」

そう言うと、自らのジャージの上着ポケットに子猫をそっと入れた。

大きさ的には問題なく、子猫はすっぽりとポケットの中に納まっている。

苦しげでないのを確認すると、朝霧はサッカーコートへと足を向けた。
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