カワイイ子猫のつくり方
思いもよらぬ接点
不意に…何か物音がした気がして実琴は眠りから覚めた。

目覚めるのと同時に己の身体を確認するも、目前にある自分の腕は相変わらずふわふわの毛に包まれていて。

(やっぱり…そんなに都合よくはいかない、か)

未だに子猫姿のままであるのを再認識すると実琴は小さく息を吐いた。

やはり何か行動に移さなければ、自然に元に戻ることはないのかも知れない。


ふと周囲を見渡すと、先程までキッチンにいた千代の姿がなかった。

(あれ?千代さん、もうお料理終わったのかな?私そんなに寝ちゃってた?)

然程ぐっすり寝たつもりはなかったのに。

そう思いつつも慌てて周囲の気配を探る。

すると、玄関ホールの方から千代と誰かの話し声が微かに聞こえてきた。

(もしかして、朝霧が帰って来たのかな?)

子猫である今の現状で朝霧は一応ご主人さま(飼い主)に当たるし、とりあえず迎えに出ようと実琴は声のする方へ足を向けた。

すると。



「おっ?猫?」


玄関ホールへと出たと同時に突然横から声を掛けられ、実琴はビクリと動きを止めた。

そこに居たのは見知らぬ男性だった。


品の良いグレーのスーツに身を包む、スラリとした長身。

前髪はオールバックで固めていて一見エリートっぽい雰囲気なのに、よく見ると後ろ髪は長く、ゴムで一つに結ばれていて。

それが普通のビジネスマンでは有り得ない『軽さ』みたいなものを感じさせた。
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