カワイイ子猫のつくり方
その後も父に対しての朝霧の態度は変わる様子はなかったが、家族が一人増えただけで随分と家の中は賑やかさを増した。

(きっと、これが本来の朝霧家の姿なんだよね。何だか安心したなぁ)

親子のやり取りを眺めながら実琴は思った。

自分が心配するようなことではないのだけれど。


何より朝霧の父親は気さくで明るい感じの人で、話術にも長けている。そんな印象を受けた。

そして朝霧も無愛想な態度ではあるものの、何だかんだと話を振ってくる父に対して自分から口を開き、時には冷たいツッコミを入れたり。

これがきっと、この親子の形なのだろう。

(優しそうなお父さんで良いじゃない)

自分を抱えたままで父とやり取りをしている朝霧を見上げ、実琴は内心で微笑みを浮かべた。

母親がいないのは本当に気の毒ではあるが、その分この家には千代がいる。

こんなに温かい二人の理解者がいるのだから、朝霧はやはり幸せ者だと思った。




夕食の時間になると、食卓の上にも一人分の料理が増えることで普段とは違う賑やかさがあった。

何より千代の張り切り具合が半端ない。

(スゴイご馳走!今日は千代さん、午後からずっと仕込みしてたもんね)

誇らしげに料理を振る舞っている千代に笑みがこぼれる。

「さあさ、どうぞお召し上がりくださいな」


そして子猫の分も朝霧の横に並ぶようにきちんと用意されており。

そんな千代の心遣いが嬉しかった実琴だった。
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