カワイイ子猫のつくり方
「だからね、伊織」

「……はい…」


不意に「くん」付けから呼び方が変わり、父親の真剣な様相に朝霧が視線を上げた。

「だから君は自分の好きな道を歩んでいいんだよ。家に縛られる必要なんてないんだ」

「…父さん」

「そこら辺は、これから僕が変えて行こうと思っている。勿論、君が病院経営に興味を示すのなら出来得る限りの協力、後押しはさせて貰うけどね」

「………」



そんな親子の会話に。

横でずっと静かに耳を傾けていた実琴は、密かに衝撃を受けていた。

(病院経営?朝霧の家が…?じゃあ、もしかして朝霧はその病院の跡取り息子ってことっ?)

その衝撃の事実に驚きながらも、それならば逆にこの家がこれ程立派なのも素直に頷けるような気がした。

やはりサラリーマン家庭とは全然違う。

そもそも根本的に違い過ぎる。

(日々頑張ってるウチのお父さんには悪いけどね…)


素直に凄いなぁと思う反面。

でも、何か事情があるのだろうか。

今の言い回しだと、仕方なく家業を継いだみたいに聞こえる。

(きっと色々な苦労もあるんだろうなぁ。それこそ、ただの会社経営なんかじゃなく医療の現場だもんね)

難しいことは全然分からないけど、きっと大変なのだということだけは解る。


でも朝霧のお父さんは、きっと…。

朝霧にそんな自分と同じ苦労を強いりたくないんだ。

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