幸姫


 「しっかり捕まっとけよ?」

 「へ…?キャァ!!」

 秋夜さんがそう言った後、乗っていたほうきが、空高くへと飛び上がった


 下を見ると、家の灯りがとても綺麗に光っていた
 
 「う…わぁ…」


 思わず声が漏れる


 「平気なんだな」

 「え?」


 「高い場所のことだ。体外の人間の女は高いとこは苦手だと聞いた」


 「あ〜…分かんないんだけど、なんか高いとこは昔から平気なのよね私」


 高い場所は不思議と怖くない

 逆に何だか心地よい感じだ


 ………それより私はどうなってしまうのだろうか


 魔法使いだとか言う男二人に強制連行され、智恵さんにはサヨナラ一つ言えていない


 それに、私が急に消えたらきっとみんな心配する

 私が消えたその後が不安で仕方ない


 「はぁ…」


 「どうした?」

 「いや……」 

 「後のことが心配なのか?」

 この人は魔法使いと言うよりエスパーだ……

 なんで、こう何でもかんでも当ててくるんだろうか


 「心配するな。特別な術で人間の記憶を修正した」


 「特別な術…?」


 「あぁ」


 「それってどんな?」


 「姫には悪いが、姫は元からここには居なかった事にさせてもらった」


 え?今なんて━━……

 私が元からここに居なかった事にってつまり

 「この十六年が無かったことになったってわけ!??」

 「人間界ではな。姫と関わった全ての記憶をイジらせてもらった。まぁ、俺らみたいな魔法人の記憶には残ってる」


  智恵さんと、施設のみんなと過ごした事

 友達と一緒に遊んだこと


 そんな全ての思い出が私の記憶にはあって、向こうにはない


 なんて酷い仕打ちなのだろうか


 
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