幸姫


 「そうだ。まぁ、でもそれも言う事は無くなるんだろうけどな」


 親父は少し寂しそうな顔をした

 「どういう事??」

 「そう言えばお前に言うの忘れてたな…。実はマリア姫は見つからない場所へと飛ばしたんだ」

 …………は?姫を飛ばした!??

 「確か今日飛ばすとか言ってたかな………っておい!!?」


 気づけば俺は城へ向かって走っていた

 
━━━バンッ!!!

 「秋夜くんか」

 王様は一人で、外の屋上テラスにいた

 「マリアは…姫は……」

 俺が急いでいる理由を察したのか、優しい声で『そこに座りなさい』と言ってきた


 「その事はお父さんに聞いたのか?」

 「はい」

 「どういう事ですかと言うような顔をしておるな」


 「当たり前じゃないですか!姫を見つからない場所に飛ばすとは、どういう事ですか!?」


 「そのままの意味だ。マリアの力は悪魔に知られてしまった。今回は勝てたが、いつ奴らが壮大な力を得て、襲いに来るかも分からぬ。大人になるに連れ、マリアの気は一層高まるだろう。そうなると悪魔だけでなく、他の連中にも目を付けられるに違いない」


 「だからと言って、マリアを一人知らない場所へと飛ばすのですか?酷すぎますよ!!!」


 俺はつい大きな声で怒鳴ってしまった              

 ……が、しかし王様は怒らなかった

 「……そう言われても仕方はない。実際、自分でもそう思った。まだ四つの子を知らない地へ飛ばすなど酷いやり方だ、とな。でも、これがマリアを助けるための最終手段だと思ったんだ」


 最終手段……

 「力の大半は私の魔法で隠した」

 「魔法…ですか?」

 「あぁ。私が死ぬまでマリアの魔力は戻らない。だが、私が死んだらマリアを魔力は全て返される。いつ死ぬかわからない。その魔法は代償が必要で、私は自分の寿命と引き換えに、マリアの魔力の全てを体内に隠す事にしたんだ」


 ……それじゃあ


 「王様が死ぬじゃないですか!!」

 「それでも良いんだ。マリアを助けられるなら」

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