彼女と彼らの6ヶ月の物語
【隆友side】
【10月】
なぜだ、なぜ俺はあいつを迎え入れた?
あいつと出会って1週間ちょっと、その事ばかり考えていた。
あの日急に男の叫び声が聞こえた。
竜也と物陰から覗くと、圧倒的に不利なはずの舞が男を気絶させていた。
それを見た瞬間、使える、と思った。
それと同時に名前も知らないあいつを知りたいと思っていた。
なぜそんな事を思ったのか。今もなお分からない。
竜也は俺の判断をどう思っているんだろう…。
今度聞いてみるか。
―――――――――……ブーッブーッ…………
マナーモードにしてあるスマホが弟の文字を表示して突然震えた。
珍しい。そう思いながら電話に出た。
「何だ。」
[開口一番がそれ?]
いつもそうだろ。
そう思いながらもう一度同じ質問をした。
「だから、何だって聞いてんだろ?」
[隆に耳寄りな情報を――と思ってね?]
「用件は?無いなら切る。」
なかなか用件を言わない竜也にイラつきながら答えた。
[あ、待ってまって…………黒崎凛の素性を調べた。]
「何勝手に…[100%信用できないと仲良くできる気がしなくてね。資料があるから21時にいつものバーに来て。今夜、大丈夫?]
「あぁ分かった。」
半ば強引に言いくるめられ返事をすると、電話は切れた。
竜也が単独で動くなんて珍しい。
だが確かに素性を知らないままでいるのも気が引ける。
ちょうど知りたいと思っていたところだ。
あいつの事が解ればきっとあいつが気になる理由もわかだろう……。
そう思って手にしていたスマホを机に置いた。