例えば星をつかめるとして
* *
さらに歩くこと20分くらいだろうか、頂上に到着した。
登ってるうちに舗装された道は途切れ、木の根を足がかりに進んだ。靴が汚れ、制服であることを忘れて進んでしまったことを後悔したけれど引き返しはしなかった。
「ふう……」
開けた場所に出て、息を吐き出す。朝のため息とは違い、なんだかとても清々しかった。
頂上にある広場は、記憶にあるものと大した差は見られない。相変わらずだだっ広いだけで特に何もなく、張り巡らされた柵もところどころ壊れているような、そんな忘れられたような広場だ。
端の方にちょっとした東屋があり、ほど近くに『星見峠』と書かれた古ぼけた木の板が立っている。確か、東屋の屋根の裏には簡単な星座図が書いてあるのだっけ。
とりあえず東屋の方に足を進め、ベンチに荷物をおろす。ここ、昔好きでよく来ていたな、と思い出した。嫌なことがあったとき、一人でここまで来てぼうっとしていた記憶がある。今思えば家からなかなか距離があるのに、よく来ていたものだ。
それから、東屋から進み出て、広場の中央、太陽の真下に行く。日に日に強くなる陽射しが肌を刺すけれど、不快な暑さではなかった。
大きく伸びをして、深呼吸。
それを終えた時、ふと、見慣れないものに気がついた。
……なんだろう、あれ。柵の近くに、金属のような岩石のような塊が転がっている。