例えば星をつかめるとして
もちろん、小さい町だ。全くの初めてと言う訳では無い。けれど、私が小さい頃は転落事故もあったらしく、危ないから子供だけで行かないよう言われていたのだ。
川の近くにそれ以外の何かがあるわけでもないし、必然的にこの道を通ることもあまりなかった。こんなふうに、なっていたのか。
きょろきょろ辺りを見渡しながら歩みを進めるうちに、段々と緑の気配が濃くなってくる。せせらぎの音が、近付いてくる。
「ここだよ」
叶多が、足を止める。肩越しに、小さいけれどそれなりに立派な川が見えた。
進んできた道はそのまま橋になっていて、その脇に土手に下りるところもある。河川敷、と呼べるほど立派なものではないけれど、川を流れてきたような石も沢山転がっていた。
この川に、叶多の欠片があるのか。
──そう考えると、複雑な気持ちになる。それを拾ったら、叶多がここから去る日が、また近付いてしまう。
敢えて考えないようにしていたけれど、目を逸らしていたけれど、彼の欠片を探すという事は、つまりそういうことだ。私は彼が地球から去って、いずれは消滅してしまう手伝いを、自らしていることになる。
──それでも私は、手伝ってしまうのだけれど。