例えば星をつかめるとして
「ごめんごめん、水が綺麗で、気持ちよかったから、つい」
叶多は私の顔を見るなり、申し訳なさそうな顔になってそう言う。なるほど、水を感じててあがってこなかったのか。
ぱしゃぱしゃ、と軽やかな音をたてながら、星野は私の方へと駆け寄ってくる。随分簡単そうに歩いてくるなと思ったところで、ようやく水位が脛あたりまでしか無いことに気がついた。
「……なんだ、こんなに浅かったの……」
勿論だからと言って絶対溺れないというわけでもないけれど、やはり拍子抜けしてしまった。確かに流れは速いけど、この深さだ。
「ごめんね、心配かけちゃった?」
私のところまで戻ってきた叶多は、当然だけどびしょ濡れだ。髪の毛もぺったりしていて、なんだか別人のようだ。
「……ふっ、ふは、はははっ」
色々なことが重なって、面白くて、安心して、私は思わず笑い出した。
私が突然声を出して笑い始めたのを、叶多は目を丸くして見る。けれど、すぐにふわりと目を細め、一緒になって笑い始めた。
「ちょっと、ははっ、何で叶多まで、ふっ、笑ってんのさ」
笑いをこらえようとしてこらえきれず、ところどころ漏らしながら訊ねる。叶多は楽しげに口を開いた。
「だって澄佳が、笑ってるから。なんだか『幸せ』だなあって思って」