例えば星をつかめるとして
「……澄佳、もう少し、付き合ってくれない? ちょっと、散歩がしたくて」
黙り込んだ私に、叶多はそっと話しかける。目の前に、手のひらがそっと差し出された。
顔を上げる。叶多の優しい眼差しは、ちゃんとそこにある。
私はそれを、迷わずに掴んだ。
「夏だねえ。蝉が鳴いてるね」
「……そうだね」
川沿いをだらだらと歩きながら、あんまり中身のない会話を続ける。
陽射しはあるけれど、水辺だからか風は涼やかだ。先ほど立ち上がる時に差し出された手を握ったまま、私たちは歩き続けていた。
「そう言えば、期末試験も終わったし、もう夏休みだよね?」
「……まあ、そうだけど」
叶多の言葉通り、明日の修業式を終えたら夏休みが待っている。けれど、その言葉ほどいいものでも無いので、私は曖昧に言葉を濁した。
「夏休みにはなってるけど、私は夏期講習も申し込んでるし変わらず学校行くことになるかな。受験生には夏休みなんて無い、って言うでしょ」
「ええっ!?」
叶多は頓狂な声を出す。そんなに、驚くべきことだろうか。