例えば星をつかめるとして
「……」
私は何も言わない。
言えなかった。何を言えばいいのか、自分が今何を思っているのか、わからなかった。
視線を、伏せる。叶多の瞳を、それ以上見続ける事は出来なかった。
「……イメージ、しづらいかな。それじゃあ、見に行ってみようか」
「え?」
視線も、言葉も返さない私を、それでも辛抱強く待ってくれた叶多が、唐突にそんな提案をする。
「いくよ」
私の反応を是と受け取ったのか、それとも答えを聞くつもりもなかったのか、叶多は短くそう告げた。
不意に、繋いだままの手のひらを強く握られる。あんなにうるさく響いていた蝉の声が、遮られる。その刹那、真下から強い風が吹いた、ような気がした。
強く、目を瞑った。
「……?」
そうして、しばらくして。
不自然なほどの静けさに、恐る恐る目を開ける。すると、飛び込んできたのは。
「星……?」
そう呟いて、けれどすぐにはっとする。これは、星ではない。
暗闇に瞬く、小さいけれど明るい光は確かに星のようではある。けれど、星はこんなふうに明滅したり、動き回ったりはしない。
これは。
「蛍……!」