例えば星をつかめるとして

*光を受ける小さな惑星


──夏休み、初日。

「澄ちゃん、道ってあっちで合ってるの?」

「澄佳、地図ってどう見ればいいんだっけ?」

「はあ…………」

お察しの通り、手のかかる二人に挟まれた私は、盛大に溜息をついていた。



別に、どこかに出かけるとかでは無い。受験生の夏の行事の代名詞、模試に行くのである。夏休み初日から模試とは、学校も粋なことをしてくれる。会場が、学校のある駅よりももう少し遠く、大きな街なので、遠出みたいにはなっているのだけど。

方向音痴に定評のある真理とは前々から駅で待ち合わせをして一緒に行く約束をしていたのだけど、当たり前のようについてきた叶多も乱入して、三人で向かっているのだ。

「駅がここで、この道を下ってるのね。さっき信号があったから今はこの辺り。もう少しで着くよ」

模試の受験票についてる地図を指し示しながら説明してやる。二人ともほうほう言いながら着いてくる。真理はともかくとして、叶多はなぜ地図が読めない。私は読み方ちゃんと知ってるぞ。

時刻を見ると、一教科目が始まる時間にはまだ三十分以上もあった。余裕をもって待ち合わせをしておいて良かった。これなら、多少ゆっくりしても、向こうで十分準備する時間がある。
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