例えば星をつかめるとして
いくら夏とは言えど、六時半ともなると日は落ちている。立ち並んだ出店の熱気を浴びながら、私たちは会場への道を進んだ。
「わあ〜、色々あるんだね」
叶多は目を輝かせながら、通り過ぎるそれらを見ている。わたあめに、チョコバナナに、りんごあめ。見ているとワクワクしてくるような気持ちは、私にもわかる。
ただ、人が多いので叶多がキョロキョロしているうちにはぐれてしまうのではないかと気が気でなかった。この辺りでは一番のイベントだし、さすがに観光客も多い。それほど広くもない道が、人で覆われている。
それにしても、あんなに大勢で来たけれど、着く頃にはバラバラになってしまうのではないだろうか。今でさえ、先頭にいた子達の姿、見えないし。
と、風車を売る屋台の様子に気を取られていた叶多と私の間に、他の人が入り込む。あ、と思った時には、人波が私たちを隔てていた。
「……大丈夫?」
けれど次の瞬間には、右手に温かな感触がして、叶多の声が耳元で響く。
風車、見ていたんじゃなかったのか。当たり前のように戻ってきて、人波にさらわれかけた私の手を掴んだ叶多にびっくりしたけれど、やっぱり安心した。