例えば星をつかめるとして

「うーん、他の人とは、はぐれちゃったみたいだね」

辺りを見渡しながら、叶多が言う。確かに、さっきまではなんとなく居場所をつかめていたメンバーとも、すっかりはぐれてしまったようだった。まあ、想定はしていたけれど。

正直、これでいいかな、と思った。だって花火だって、みんなで、と言うよりは、叶多と見たいと思ったから、ちょうどいいと了承したのだし。

「まあいっか。僕、君と二人で花火が見たかったから」

「え」

ちょうど思考を読まれたかのようなタイミングでそう言われて、思わず戸惑った。叶多は深い意味もなさそうにさらりと言ってのけ、涼しい顔で歩き出す。

その横顔に、不覚にもドキリとした。そうして、やっと素直に思えた。──叶多のことが、好きだって。

時々宇宙人みたいなことを言って、けれど時々すごく人間らしくて、誰よりもまっすぐで、そして誰よりも、私を見てくれる人。

私に、星を見つけさせてくれた人。

ほんとは、もっととっくに、ずっと前から好きだったんだと思う。色々あって、自覚するタイミングを失ってしまっていただけで。

「……私も、叶多と花火が見たかった」

だから少しだけ、素直になってそう言った。叶多ほど、率直な物言いは出来ないけれど。
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