例えば星をつかめるとして

人ごみは、それだけでうるさい。私の言葉が叶多に届いたのか、それはわからない。けれど叶多の横顔が、確かに微笑んだように見えた。

その、瞬間のことだった。

──ひゅ〜!

甲高い音が、辺り一面に鳴り響く。何の音だろう、と、思い至るよりも早く。

──どん!

ずん、と、胃の底に響くような音と、衝撃。そして、それと同時に。

「……わ……!」

こぼれた感嘆は、私のものか、叶多のものか、それとも周りにいた、他の誰かのものだったのか、はたまた全員か。

紺色の夜空を染め上げる、明るい、大輪の光の花。

それだけでは、終わらない。一度咲いた花が落ちるよりも先に、また、打ち上がる音。今度は、先程よりも小ぶりな、黄色い花。ほとんど同時に、青い花。

「始まっちゃった……!」

近くの誰かの声を拾って、ようやく気が付いた。会場に着くまでの沿道上で、開始時刻を迎えてしまったのだ。

歩いていた人、屋台の人、誰もが足を止めて、頭上を見上げている。私も叶多と手を繋いだまま、その場所に立ったまま、打ち上げられる光の花に目を奪われた。

「──すごいね!こんなの初めて見た!」

興奮気味の、叶多の声が聞こえてくる。花火のように目を輝かせて、彼は私の手を強く握っている。

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