例えば星をつかめるとして
「や、違うよ? ほんとにはぐれちゃっただけだから!」
「ほんとに……?」
慌てて首を振って否定すると、それでも疑わしいというような視線を向けられる。ほんとほんと、と、激しく首を縦に振って見せた。幸いにも、それ以上は追及されなかったけれど。
「他のはぐれた人たちとは連絡取れてるから、各自解散でいいよね。帰ろう」
てきぱき話が進むのを聞きながら、私たちはそれには参加せず黙って進んでいた。
もうすぐ、駅に着く。帰ったら、いつも通り、受験生の生活が戻ってくる。そう考えると、この時間が終わってしまうことが、少しだけ寂しく感じた。
叶多がぽつりと、呟くように言ったのは、その時のことだった。
「澄佳、実はね、全部揃ったんだ」
「──え?」
唐突な言葉に、喧騒が遠のいたような錯覚を覚える。
なにが、とは、言われる前にわかったような気がした。
「うん、ほら、」
叶多の口が、開く。だめだ、と思った。それ以上言わないでくれ、と、願った。
「──欠片が。全部、揃ったんだ」
けれど、叶うはずもなく放たれた言葉は、私が想像した通りのものだった。