例えば星をつかめるとして
第一章

*銀河の外れの蒼い星

「あっ!澄ちゃん今日は学校来た!」

教室の扉を開くと、鈴をならしたような声が響く。

私の名前を呼んで、ポニーテールを揺らすのは、去年から同じクラスの速水真理だ。まるで私がサボり癖のある非行少女であるかのような口ぶりに、思わず笑いがこぼれた。

──まあ、昨日はサボっているわけなんだけど。

「今日は、って、いつも来てるでしょ。昨日はたまたま」

「そうなんだけどー。寂しかったんだもん、澄ちゃんいなくて」

真理は学校の近所に住んでいて、通学は自転車だ。電車が止まろうが関係ない。そう言えば今朝はちゃんと動いていたんだけど、電磁波による不調はなんとかなったのだろうか。

──昨日、あの後、私は結局学校へは行かなかった。

行こうにもあの衝撃の光景が目から離れなかったし、そんな状態で授業の内容が入ってくるとは思えなかったからだ。曲がりなりにも受験生なのに素行不良もいいところだ。

そして、昨日見たものは、私の白昼夢だと思うことにした。

だって信じられるだろうか。宇宙人だなんて、宇宙人だなんて!手品だとか化学反応のなんたらだとかの方がまだ信じられる。電磁波によって見た幻覚とか、そういうものだったんだろう、きっと。

昨日はだいぶ動揺してしまったけれど、私は本来非科学的なものは信じない主義なのだ。夢なんてものに現実逃避している暇はない。
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