例えば星をつかめるとして
第四章

*遠ざかる宇宙の壁


違和感の始まりは、家の扉を開けた時からだった。

何となく、空気が違うような気がしたのだ。どう違うかと言われたら、わからないけれど。

それに。

「あれ……いない」

門を開いて、誰もいない空間を見て呟く。大抵、待ち構えたように叶多がここに立っているのに。

私が学校へ行く時間は、大抵毎朝変わらない。いつからか、その時間を覚えた叶多は、それに合わせるようになっていたのだ。

夏休みに入ってからは毎日一緒に行っていたから、いないというのは珍しいと思った。

……でもまあ、約束をしているわけではないし、今まで一度もなかったというわけでもない。寝坊した叶多が空を飛んで追いついてきたこともあった。

だから、その時は大して気にしなかったのだ。私に寝ろ寝ろ言いながら、叶多の方が夜更かししたんじゃないかくらいに考えていた。昨夜の違和感は、すっかり忘れ去っていたから。

けれど、駅に着いて、電車に乗って、学校の最寄り駅へ着いても、叶多に会うことはなかった。

もしかしたら、先に行ってるのかも。学校までの長くも短くもない道を歩きながら、そんなことを考えていた。叶多、たまに図書室に寄っていろいろ調べているから、そういうのかもしれないし。
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