例えば星をつかめるとして
「星野叶多、だってば。同じクラスでしょ? 私の隣の席だったじゃん」
どうか、うんと言って。半ばそう願いながら、真理の言葉を待つ。
けれど真理はさらに、首を捻った。
「同じクラス……? そんな人、いないよ? 澄ちゃんの隣の席は私だけで、反対側は空きだったじゃん」
「……え?」
真理の表情は真剣そのもので、間違っても冗談を言っているようなものではない。いっそ、冗談であってほしいと願った。あはは、澄ちゃん嘘だよ、星野くんのこと忘れるはずないじゃん──。
けれどそんな願いはむなしく、真理の表情は動かない。その、瞬間のことだった。先ほど教室を開けた瞬間の、妙な違和感の正体に思い当たる。
──机の配置が、おかしいのだ。
昨日までは、私と真理と叶多と三人で、いつも使う机をほんの少し寄せて使っていたのに。今は、動いてる机は二つだけ──つまり、私と真理のもの、それだけで。
叶多が使っていた、私の後ろの机を見る。その位置は、不気味なほどまっすぐだった。いや、もちろん、その場所が正しいのだけど、そうではなくて。
まるで、それを使っていた人なんて、いないかのようで。