例えば星をつかめるとして
浮かびかけた回想をねじ切って、私は真理の右隣、最後列の自分の席に行く。先週行われた席替えはいい席を引いたと思う。真理と近いし、何より目立たない一番後ろの席だもの。
けれど荷物を置いたとき、ふと、違和感を覚える。
その正体はすぐにわかった。真理と反対側に、机があるのだ。ここは人数の都合上、誰もいなかったはずなのに。
「……転校生?」
とりあえず、机を指さして真理に訊ねる。けれど。
「え?何言ってんの?澄ちゃん一日休んでぼけちゃった?そこ、星野くんの席じゃん」
「星野くん?」
誰だそいつは。
不可解なことを言い出した真理に、私は首を捻る。星野くんなんて人がクラスにいた記憶は無いし、やっぱり私の右隣は空いていたと思う。
その時ちょうど、ガラリと教室の扉が開く。
「ほら、星野くん」
真理が指さした方を見ると同時、私の口があんぐりと開いた。
「思い出した?」
私の様子に、というか動揺に気付かないのか、真理がなんてこともないようにそう言う。けれど私はそれどころじゃなかった。
思い出したは思い出した。それはもう鮮明に。けれど多分それは、真理の言っているものとは違う。
教室に入ってきたのは、"星野くん"──否、昨日私を助けた、銀色の物体から人間になった宇宙人だった。