例えば星をつかめるとして
「な……」

叫びそうになるのをなんとかこらえて、まじまじと、宇宙人を観察する。

細身で色白な体躯、さらさらしていそうな黒髪、すっと通った鼻筋、そして星空を溶かしたような瞳。

……間違いない。人違いでも見間違いでもない。昨日、私が見たあの彼だ。とても残念なことに。

どういうことだろう。彼がここの生徒に紛れ込んでいることはまあ、わかった。わかりたくはないけれどわかった。

だが、真理の言葉が冗談でないとしたら──様子を見る限り冗談ではないのだろうけれど、クラスの人たちは、記憶に、あの宇宙人が前からこのクラスにいたというふうに刷り込まれているということ?

現に真理以外のクラスメイトも、彼の姿を見て戸惑った様子はない。"星野"という一人の生徒として、違和感なく受け入れられている様子だ。

そうして見ていたら、彼がこちらを振り返る気配を察して私は勢いよく視線を逸らした。なんとなくだけれど、目を合わせてはいけない気がした。

「あの細いイケメンだよ。ほしのかなたくん」

「……ほ、星の彼方?」

真理が告げた名前に、そんな気はなかったのに思わず聞き返してしまった。なんだ、星の彼方って。そのまんまじゃないか。宇宙人アピールでもしているのだろうか?

「星野叶多くん。ロマンチックな名前だよねぇ」

「……ロマンチック……」

うっとりしたように、真理が呟く。その評価には曖昧な相槌だけ返しておいた。ちょっと、否定も肯定も出来ない。
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