例えば星をつかめるとして

うん、白状するよ。僕はずっと前から、君のことが好きだった。多分、初めて会った時から、ずっと。

君の、しっかりしているようで揺らいでいる瞳が、綺麗だと思った。強いように見えるのに本当は脆いところを、守りたいと思った。地球の綺麗な景色を目に映して、素直に声を上げる無邪気さが、愛しいと思った。

……届かないとわかってて、こんなところで告げるのは、卑怯だよね。ごめん。でも、告げてしまったら、僕が離れられなくなってしまうと思ったから。

君と、もっと一緒にいたかった。君が夢を見つけるところだけじゃなくて、君の夢が叶うところまで、見届けたかった。

欠片が集まっても、地球にい続けたかった。出来そうだと思ったんだ。心配してた重力の問題は、人間の身体を保とうとしてるうちは、起こらなかったから。

でも、出来なかった。

自然の摂理なのか、惑星の意思なのか、わからない。欠片を全部集め終わった途端、人間としての『星野叶多』が役目を終えたということなのか、居場所が、なくなっていったんだ。

君は気付いていなかったと思うけど、教室の机は一番最初に消えていた。僕の部屋の荷物も、少しずつ消えていった。家の食卓にある写真も、いつのまにか二人だけのものになっていた。僕という人間の存在に関するものが、少しずつ消えていった。
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