例えば星をつかめるとして

僕はこれから、人間の身体から、元の石ころに戻る。そうしたら、石には記憶を集積する場所が無いから、僕の記憶はきっと、保っていられない。だからせめて書いておこうと思ったんだけど、やっぱ書ききれないな。君には、伝えたい想いが多すぎるから。

本当に、ありがとう。澄佳に会えたことが、僕の生まれてきた意味だったんだと思っているくらい。

君は、ここまで読んでくれてるかな。気持ち悪いと思っても、律儀な澄佳のことだから読んでてくれそうだな。身に覚えのないことをずらずらと書かれて、困惑してるかもしれない。でも、少し、ほんの少しだけでも良いから、こんな不思議な手紙が届いたことを、覚えててくれないかな。それだけで、十分だとおもえるから。

これから、澄佳の道には沢山のことが待っていると思う。僕はそばで支えてあげられないけど、君ならきっと大丈夫。君はこの星に愛されているから。

ありがとう。


星野叶多より


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長い、長い手紙だった。

紙は六枚にも及んで、びっしりと書かれている。どのくらいの、時間がかかったんだろう。多少いびつだけれど、どの字も丁寧に書かれていた。

最後の署名のあとに、ちいさく『この手紙が、消えずに届きますように』と書いてあるのを見つけた。願いの先は、流れ星か、それともこの地球にか。
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