例えば星をつかめるとして

「大きな間違いだから!何があったって、忘れたりしない!あんたが勝手に帰ったこと、ずっと覚えてるし、今度あったら絶対、絶対文句言うから、覚悟しててよ!」

もう、自信があった。絶対に叶多のことを覚えていられると。

星空に叫ぶのは、まるで誓いのようだと思った。良いだろう。私はこの星に誓う。絶対に、叶多のことを忘れない。

「文句だけじゃなくて、他にも言いたいこと、まだ沢山あるんだよ!お礼くらい、ちゃんと言わせてよ!私だって、あんたと同じくらい、ううん、あんたよりもっと、叶多のこと大切だと思ってたんだから!」

胸の中から、手当り次第に言葉を掬い出して、空に放り投げる。

「叶多のおかげで、綺麗だって気付けたもの、沢山あった!私は、星を見ようとしてないだけだったって気付けた!全部ぜんぶ、叶多のおかげだった……!」

涙が滲んできたのか、視界がぼやける。それでも、叫ぶことをやめなかった。

「まだ、ちゃんとお礼言えてないのに、聞きもしないでいなくなっちゃって、自分はあんな手紙寄越して満足したの!? 私にだって、言わせてよ!ちゃんと、聞いて欲しかったよ……!」

ああ、今、こんなにも、貴方に会いたい。
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