例えば星をつかめるとして
終章
*この手につかんだ星
「卒業おめでとう、私達ー!」
パンッ、と、軽快な音をたてて、クラッカーが鳴り響く。わあっと、あちこちで声があがった。
鳴らした張本人、真理が、制服のスカートを揺らしてこちらを振り向く。もうこれを着ることもなくなるわけか、と、一瞬感慨にふけった。
「澄ちゃーん!三年間ありがとう!」
大声で叫んだ彼女が、満点の笑みで勢いよく私に飛びついてくる。両手を広げて受け止めて、私も微笑んだ。
「こちらこそ、ありがとう。真理のおかげで、三年間楽しかった」
ずっとクラスが一緒だったし、真理とは付き合いが長い。これからは、彼女とも別々だ。やっぱり、少し寂しい。
──三月。私たちは、無事に高校を卒業した。
今は、卒業式のあとのホームルームも終えて、教室で各自で別れを惜しむ時間、だろうか。うちのクラスはクラッカーを鳴らしたけれど、隣のクラスはホールケーキを頼んだりしていた。
夏、突然進路を変えた私だけれど、あれから必死に勉強して、ちゃんと志望校に合格できた。春からは、隣の市の私立大学で、環境学というものを学ぶ予定だ。
受験勉強に本腰を入れたら、時間なんてあっという間だった。冬になって自由登校になって、入試を終えて結果が出たと思ったらあっという間に卒業式だ。まだ実感も湧いてないくらい。