例えば星をつかめるとして
それでも、手にした卒業証書は重くて、自分が高校生でなくなったんだということを、なんとなく感じた。これからその実感は、さらに強くなっていくのだろう。
「おーい、楽しむのは良いが、ちゃんと後片付けしてから帰れよー」
クラッカーの音を聞きつけたのか、教室に戻ってきてそう声をかけるのは担任の吉村先生だ。たまに空気の読めないところもあったけど、悪くない先生だったと今なら思える。
「はあい。よっしーも鳴らす? まだあるよ」
「おお、じゃあ鳴らそうかな……じゃなくて。まだ試験終わってない奴もいるんだから、今日は早く帰れよー」
吉村の言葉に、クラスの一部分がウッと動揺している。国公立の二次試験組は、卒業してもまだ受験が終わらないから大変だ。
そういうことも考慮して、今日はこのまま打ち上げを行ったりはしないことになっていた。春休みはどうせ長いので、落ち着いた頃に集まろうと、もう日取りも決めて店も予約してある、らしい。だから今日は、卒業式といってもほんとに形式だけのような感じだ。
さっきの言葉でざわめいていた人たちが、そそくさと荷物をまとめて教室を出ていった。他にも部活で集まりのある人たちが、徐々に帰り支度を整え始めている。