例えば星をつかめるとして

「澄ちゃん、私、そろそろ部活の方行かなきゃかも」

「あ、吹部あるんだよね。わかった、行ってらっしゃい」

「クラスの打ち上げだけじゃなくて、春休み中いっぱい遊ぼうね! 連絡するから空いてる日教えてね!」

真理を見送って、一息つく。部活に入っていなかった私は、特に集まりもなかった。今日は、どうしようか。蛍プロジェクトの活動も、入ってないし。

そうなのだ。受験勉強の傍ら、私はあの掲示板で見た、蛍プロジェクトに参加するようになった。と言ってもボランティアの一人みたいな感じで、月に一回程度、川の清掃をしたりするくらいなんだけど。

……叶多がいた日々は、確かに、私に影響を及ぼしている。叶多が教えてくれた、身近にあったのに知らなかった『奇跡』は、私の進路決定にも大きく作用していた。

「ねえ、今日流星群なんだって」

「へえ〜。起きてたら見ようかな」

ふと、耳に入ってきた会話。そうか、流星群なのか。

「……見に行こうかな」

ぽつり、呟いた。

無性に、あの場所──星見峠に行きたくなった。



* *



あの日──叶多の手紙が届いた日からも、だいぶ時が経った。

あの日から、私の記憶の風化は、あんなに消えていったのが信じられないくらいにぴたりと止んだ。今でも私は、あの日々を、鮮明に思い出せる。
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