例えば星をつかめるとして


「……面白い?」

思わず、彼の横顔に問いかけていた。星野が何を思うのか、知りたかったのかもしれない。

ゆっくりと振り向いた星野の、瞳がまっすぐにこちらを捉える。この瞳はなんでこんなにも、まるで星空のように澄んでいるのだろう、と、心のどこかで私が呟いた。

「びっくりしてるよ。こんなに高い建物が山ほどあるんだね。人間は、空を目指しているのかな」

空を目指しているのかな。

相も変わらずどこかずれた感覚で紡がれる言葉が、けれど今は私の胸に刺さった。

なんて、綺麗な感性なんだろう。この薄汚れた街並みを見て、そんな風に考えるなんて。

「……星野は、街の部品ではないんだね」

ぽつりと、言うつもりのなかった言葉が漏れる。

悟りにも似た思いだった。星野は、違うんだ。薄汚れてなんかない。いつだって、彼の瞳は澄んだ空を捉えている。

同時に、どこかに潜む私が囁く。




──けれど私は、あの街の部品になってしまったんだ。



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