例えば星をつかめるとして
* *
「はい、おにぎり」
カツン、と小さな音をたてて、私たちの前におにぎりの入った皿が置かれた。
ささっと作ってくれたおばあさんは、にこやかな笑顔で私たちを見ている。
「わあ……ありがとうございます」
そう言いながら、星野はおにぎりを見て、それから何故か私を見る。食べても問題は無いだろう。私は小さく顎を引いて見せた。
「はい、どうぞ。澄ちゃんも食べていいからね」
「……ありがとうございます、いただきます」
促されて、私はおにぎりに手を伸ばす。それを見た星野も同じようにするのを見て、もしかして先ほどの視線は食べ方を尋ねていたのかと思い当たった。
「!……美味しい」
一口頬張った星野は目を丸くしている。思わずこぼれ出たというようなその言葉に、おばあさんは嬉しそうに目を細めた。
「お腹空いていたんだねえ。さすがは若い男の子。おじいちゃんの若い頃思い出すわ」
続けて二三口と頬張る様子を、おばあさんは微笑ましそうに見つめている。
星野につられて私も一口かじる。ほかほかのご飯から昆布が顔を覗かせて、いい匂いが鼻腔をくすぐる。海苔はぱりっとしているし、塩味もちょうど良かった。
「美味しいです」
自然と飛び出た言葉に、おばあさんはやはり嬉しそうな表情を返してくれた。