例えば星をつかめるとして
「良かった。でもあんまり食べすぎたらお夕飯食べられなくなっちゃうからね。それじゃ、ごゆっくり」
そう言って、おばあさんは二階へとあがっていった。
静かになった部屋に、星野がおにぎりを食べる音だけが響く。
私ももう一口食べる。六限まで授業を終えて帰れば、昼ご飯からそれなりに時間がたっているというもの。丸一日何も食べていない星野ほどではないものの、私もお腹が空いていた。
「"美味しい"って言葉は知っていたんだけど、どういう感覚かまではわからなかったんだ。こういうことなんだね」
感心したようにそう言って、また口いっぱいにおにぎりを頬張る星野の姿は、さっきのおばあさんの暖かい視線がうなずけるような微笑ましさがある。
それについ気が緩んで──それどころじゃないことにはっと気がついた。
「星野、ここの人と知り合いなの?」
慌てて尋ねる。二階へ行っているからそうそう聞こえないとは思いつつ、声は潜めた。星野はおにぎりを頬張ったままこてんと首を傾げた。
「ううん……っていうか僕、この星には君以外の知り合いなんていないよ。どういうことなんだろう」
「……やっぱり」
内心そうかな、と思っていたので、私はそう答えた。