例えば星をつかめるとして
「……どうやら、そうみたいだよ」
星野は私の意見に頷きながら、食卓の上の写真立てを指さす。
そこには先ほどのおばあさんと、同じくらいの年頃のおじいさんが写っていた。夫婦なのだろう。二人とも、目元に刻まれた皺が優しげだ。
何の変哲もない写真。それが、私の見ている前で──揺れた。
「えっ……」
思わず声をあげる。揺れた、と言っても写真立てがガタガタと動いた訳ではない。映る景色が、色が、テレビの電波が乱れるように、音もなく揺れる。
ざざざっ、と音が聞こえてきそうな、砂嵐のような色が見え──二人の写真に、もう一人、別の人物が加わっていく。
「星野……?」
線の細いシルエット、さらさらした髪。そして身につけている制服は、間違いなく私と共にいる星野のもの。
よく見ると、今の星野よりも幾分か幼く、中学を卒業したばかりか、高校を入学したあたりの年齢のように見える。
私の目の前で、ありもしない『昔の星野』の記憶が、刻まれていく。