例えば星をつかめるとして
「この家全体に量子の変化が起きてる。君の言葉がきっかけになったんだと思う。僕をこの家に組み込む口実が、それで確定したんだ」

量子、とか、よくわからない言葉で説明されているけれど、何が起こっているかは何となくわかる。

今まで経験したことのないような異常事態を目の当たりにし、私は自然と閉口した。

「松澤さんには、量子変化の影響は出てないみたいだけど……気分悪い? まあ、こんなの見たら当然か」

「……別に、そういうわけじゃ」

困ったような星野に首を振る。びっくりしただけで、別に星野のことを気持ち悪いと思ったわけでは、本当になかった。

「年端もいかないような子供の頃の写真はないから、多分高校通うために祖父母の家に引っ越してきた、みたいな感じなのかな」

きょろきょろと辺りを見渡しながら、星野はそう言う。

「記憶の改変の範囲も最小限に抑えたいだろうし、『遠い親戚の子』くらいかもしれないけど」

「……何だか、星野を地球人に仕立てあげたい『誰か』がいるみたいな言い分だけど」

星野の言葉に引っ掛かりを覚えて、思わず口を挟んだ。

昼も周囲の記憶が書き換えられているのは自分の意図したことではないと言っていたけれど、それにしても今の言い方は受動的過ぎやしないか。

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