例えば星をつかめるとして
「ああ、ごめんね。これは確証は無いんだけど」

そう前置きをして、ふっと微笑みを消した星野は、視線を落として話し出す。

「この星は──『地球』、は、僕という存在を、ひた隠しにしておきたいんじゃないかな」

「え……?」

「もともと僕を構成する物質は、恐らくこの地球にまだ存在しないものを沢山もっている。地球の宇宙開発が飛躍的に進むかもしれないような、そんなものもね。だから地球人ということにして、宇宙人の存在を隠した。もしかしたらだけど、この星は、君たち人間に、地球に居続けてほしいのかもね、なんて思ったんだ」

そこまで話すと星野は、また、ふわりと笑みを浮かべる。けれどそれは、どうにも無理しているようにも見えて。

「紛い物のハリボテだとしても、人間になれて僕は嬉しいんだけどね」

──その、様々なものを含有したような瞳は、言葉とは裏腹にすごく人間らしく映る。

「……都合が良い、って、考えれば」

自然、私は口を開いていた。

「私には、あんたは人間に見える。だからそれでいいんじゃないの。面倒ごと起こるよりましでしょ。ほら、欠片とか探すのに動きやすいんじゃないの」

「松澤さん……」

星野は落としていた視線を、私に向ける。星野の視線はいつもまっすぐ過ぎて、少しだけ居心地が悪いけれども、私は目を逸らさなかった。

「……うん、君が僕を人間って言ってくれるなら、僕、それでいいかな」

そうして浮かべられた笑みは、先ほどのものとは違い、自然なもののように思えて。

私はやっぱり、星野は人間らしいという感想を抱いた。
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