例えば星をつかめるとして
第二章
*見えるもの、つかめぬもの
「星野と松澤、昨日日誌提出忘れただろ。ペナルティで今日も日直頼むぞー」
──次の日の、朝。
教室に着くなり、担任の吉村は大声で私と星野にそう言い放つ。
「日誌?」
「……しまった」
きょとん、とする星野の横で、私はさっと顔を青ざめさせる。
昨日、5限とHRの間にしっかりと書き終わらせていた日誌は、けれどそのあと急いで──進路希望票から逃げるように──下校したことによって、すっかり存在を忘れられ、私の机の中に放置されていた。
「今日は色々運んでもらうものがあるから、諦めて手伝えよー」
「……はーい」
やらかした。いつもならこんなミス犯さないのに、と内心で舌打ちしながら、しぶしぶ頷く。すると隣で、恐らくあまり状況が飲み込めていないのであろう星野も「はーい」と返事をした。
ん、だけど。
「よっしー、ここぞとばかりに澄ちゃんたちのことこき使ってるね」
他人事だと軽い調子の真理の言葉に、私は深々と息をつく。
今は昼休み。一人お弁当を広げて優雅にランチタイムを始める真理を横目に、私と星野はクラス全員分のノートの整理作業に勤しんでいた。