例えば星をつかめるとして
「……ねえ」
どのくらい、そうしていたのか。沈黙に耐えきれず、私は口を開いた。
「今日、すごく人間らしくクラスに馴染んでたけど……何か、したの?」
何か話題と思って、今日ずっと疑問だったことを尋ねる。けれどすぐに後悔した。なんだかすごく、疑ってかかっているような言い方だ。
けれど星野はさして気にした様子もなく、にこりと笑んで頷く。
「人間らしいなら、よかった。きっと、学校生活に関する知識はそれだけ量が沢山あるからだと思うよ」
「……どういう、こと?」
その分野によって星野の知識に偏りがあるということか。原理がよくわからなくて、私は聞き返した。学校にいる時と、そうでない時の星野の振る舞いの人間らしさはかなり差がある。
「うーん、僕がもっている知識は、全部松澤さんのものだよね。けれど僕は君の全ての知識を読み取れるわけじゃなくて、多くは君が日常的に使う知識なんだ。君は学校で多くの時間を過ごしているから、それだけ知識も学校のものが多かったってこと」
星野の言葉をゆっくりと解して、私は頷いた。確かに、自然なことだと思う。例えばテレビで目にしたような使うとも限らない豆知識より、学校のなかで頻繁に使うものの方が、読み取られる部分(があるのだとしたら)の表層に出てきていそうなイメージがつく。