例えば星をつかめるとして
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バスの窓の外を、のどかな山道が通り過ぎていく。
最近来ることはなくなったけれど、やはり見慣れた道だ。懐かしさに胸が詰まった。
あまりののどかさに、この先に隕石が落ちたなんてにわかには信じ難かったけれど、道路にはテレビ局や大学のものと思われる車両がちらほら見えて、少しだけいつもと違うことを実感出来た。
隕石……ねえ。
墜落現場を見ようと、学校から逃げ出してこうしてバスに揺られているけれど、私は別にミーハーなわけではない。むしろ疎い方であるとも思う。
別に隕石に何かを感じるわけでもないし、宇宙に憧れを抱いているわけでもない。そんなロマンチストな感性は残念ながらどこかに置いてきてしまった。
いつまでも夢ばかり見ていられる歳ではいられないのだし、仕方ないことだと思う。
そんなことを考えながら、景色のせいか子供の頃の記憶が蘇って無性に切なくなった。
この山に来ていた頃は、カブトムシの新しい種類を発見するだとか秘密基地だとか、そういうことばかり言っていた気がする。
『星見峠入口ー。星見峠入口ー。お降りの方はボタンをお押しください』
物思いに浸っていると車内アナウンスがかかって、慌てて降車ボタンを押した。