例えば星をつかめるとして
「……はあ」
思わず、溜め息がもれる。
──何を書くのか、決めていなかった。
いや、一応目星をつけてはいるのだ。こんな片田舎で、家だってそれほど裕福でもなくて、成績だって飛び抜けて優秀でもなくて、ある程度は限られるのだから。
「……」
しばらく白紙の欄を睨みつけ、それからボールペンを取る。
通える範囲の大学の名前を書く。そして、その横に『経済学部』と書き込んだ。
その選択に、何か熱烈な理由があるわけでは無い。近くの大学にその学部が設置してあって、本来文系の学部ではあるけど受験科目も満たしているから。理系クラスにいるから数学はやってるしそこそこ良くて、あとの受験科目である英語や国語もひどい成績なわけでもないし。
そもそも理系を選んだのだって、ただ何となく得意だったから、だけだ。遠くの学校の医学部に行きたいわけでも、まして医者になりたいわけでもないし、薬学部や農学部にも特別惹かれるわけでもない。
──やりたいことが、ないのだ。