例えば星をつかめるとして
「いや待って、提案しといて自分乗れないってどういうこと? さすがに男乗せて二人乗りは重いから無理だよ」
「じゃあちょっと浮いとくね。そしたら僕のぶんの重さはないよ」
「そういうことじゃないんだけど!」
ずれてる。とってもずれている。
さっきまで見てた頼もしい星野はどこに行ったんだろう。一日ぶりの天然ぶりに私は頭を抱えた。
二人乗りをしたことがないわけでもないけど、男とはやったことがないし、何よりなんで私が漕ぐほうなんだ。普通逆でしょ。
「重いとか重くないとかの問題じゃなくて、なんかさ、」
「ここからだとどれくらいかかるのかな。夕焼けは見れるかな」
「星野ちょっと私の話聞いて」
行く気満々という様子の星野に、盛大に脱力した。
……不思議なことに、星野がこれだけ乗り気なのに、断るのは申し訳なくなってくる、ような気もする。
ちょっと悩んだ挙句、溜息を吐く。仕方ない、重くないと言うのなら、やってやるか。
「……はあ。落ちても知らないからね」
短くそう告げて、私はサドルにまたがる。意図はちゃんと伝わったらしく、星野はぱっと嬉しそうにした。
「わあ! 松澤さんさすが!」
歓声をあげるやいなや、星野は後ろから乗り込んでくる。今日は日直付き合ってもらったのだし、甘くしても良いだろう、と言い聞かせた。