例えば星をつかめるとして

「えーっと、これ、どこ掴めばいいのかな」

「っひ、」

──キョロキョロとしている様子の星野の動作のひとつひとつが、気配が、ものすごく近い位置に感じられて、思わず変な声が出た。

「ん? 松澤さんどうしたの? 僕何かしたかな」

不思議そうな星野の声も、ちょうど耳の後から聞こえてきて、まるで囁かれているような錯覚に陥る。

「……や、なんでもない。無かったら私にでもいいから、どっか掴んで。逆に不安だから」

なんとか平静を取り戻して、言う。肩くらいなら、掴まれても平気なはずだ。

「わかった。それじゃ、掴まらせてもらうね」

「ぎゃ、」

また、変な声が漏れる。しかもすごく残念な声だ。でも今回ばかりは仕方ないと思った。

あろうことか、星野は私の胴に腕をまわし始めたのだ。

そんなに密着しているわけではないけれど、腕の感触やら背中のすぐ後ろの気配やらは感じる。こ、これはまるで抱きすくめられているみたいじゃないか。

「ん? どうしたの松澤さん」

──厄介なことに、こいつは全くの無意識みたいだけど!
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