例えば星をつかめるとして
私は、確認のために足元を見て、ぎょっとした。
「ちょ、浮いてる……!?」
思わず叫び声をあげる。前輪が、明らかに地面から浮いていたのだ。
後ろで星野が笑ったのを気配で感じる。もしかする余地もなく、明らかに星野の仕業だ。
「松澤さん、空、飛んでみない?」
「は!?」
全く悪びれた様子もなくそう提案する星野に、叫び声で返事をする。彼はまた、楽しそうに笑った。
「大丈夫。怖くないよ」
そう話してるうちに、ついに後輪も浮き上がったようで、地面から伝わる振動が無くなる。
ゆっくりゆっくり、もうとっくに坂は下りになっているのに、さらに視界が高くなっていく。
「……!!」
だんだん街並みが遠ざかって、空にどんどん近づいていく。
「ほら、風がすごく気持ちいい」
声すらも出せない私とは裏腹に、後ろから聞こえてくる星野の声は非常に楽しげだ。