例えば星をつかめるとして
このあたり、と私は思い当たる。ちょうど、昔遊んでいたあたりだ。節くれだった幹の、登るのに丁度いい木があったのだ。もしかしたら、隕石が落ちたせいで、倒れてしまったのかもしれないけれど。
辿り着くと、想像以上の人の多さに驚いた。見ようにも人の頭ばかりで、全くと言っていいほど様子がわからない。必死に爪先立ちをしてはみたけれど、身長が160センチにも満たない私がいくら頑張っても何も変わらなかった。
それに人垣の先頭に行っても、立ち入り禁止のテープがあるから結局はそれ以上に行けないのだ。隕石がどんなものなのか窺うのは難しいだろう。
見えないんなら、来た意味、なかったじゃん。
思わず落胆して、額から流れてくる汗をぬぐった。
地中からひっくり返ったような土はまあ、隕石が落ちたような感じがしなくもないけれど、これだけを見て来た甲斐があったとは納得し難い。
けれどこのままここにいてもどうにもならないので、仕方ないけれど帰るか、と踵を返す。勿体ない気はするけれど。
もともとどうしても隕石が見たかったわけでもないし、久しぶりにこの山に来れただけでも懐かしかった。遊んだ思い出の場所はほとんど見れていないけれど。
……いや、ちょっと待って。考え直した。
数歩進んで、私は立ち止まった。そしてくるりと振り向くと、人ごみの先、さらに先の方を見つめる。
どうせなら、久々に頂上まで行ってみようか。